投資用ワンルームを売ると、手元にいくら残るのか。費用と税金を全部並べる2026.09.07
「2,600万円で売れました」
そう聞くと、2,600万円が手元に入ってくるように思えます。
実際には、決済の日に引かれるものがあり、その翌年にもう一度支払いがあります。
売却を決める前に、最後にいくら残るのかを一度計算しておいてください。
この記事では、費用と税金を順番に全部並べます。
引かれるものは2回に分かれる
| いつ | 何が引かれるか |
|---|---|
| 決済の日 | ローン残債・仲介手数料・印紙税・登記費用・繰上返済手数料 |
| 翌年の確定申告 | 譲渡所得税(所得税・復興特別所得税・住民税) |
見落とされやすいのは2つ目です。
決済の日に手元に入った金額を「手残り」だと思って使ってしまうと、翌年に足りなくなります。
決済の日に引かれるもの
ローン残債
繰上返済して抵当権を外さないと、買主に引き渡せません。
金融機関に返済予定表を出してもらい、決済日時点の残高を確認してください。
月末と月初で数万円変わります。
仲介手数料
法律で上限が決まっています。売買価格が400万円を超える場合は、
売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
2,600万円なら、`2,600万 × 3% + 6万 = 84万円`、消費税を足して 92万4,000円 です。
これが上限で、これを超える金額を請求することはできません。
売買価格が800万円以下の場合は別の定めがあり、
現地調査等の費用を含めて上限が引き上げられています。低価格帯の物件では確認してください。
印紙税
売買契約書に貼ります。売買価格1,000万円超5,000万円以下なら 1万円です。
本則は2万円で、軽減措置により1万円になっています(2027年3月31日までに作成される契約書が対象)。
なお印紙税がかかるのは紙の契約書です。電子契約なら原則としてかかりません。
抵当権抹消の登記費用
登録免許税が不動産1個につき1,000円です。
区分マンションは建物と敷地権で2個になることが多く、その場合は2,000円。
ただし敷地の土地が複数筆に分かれていると、その分だけ増えます。
これに司法書士へ支払う報酬が1〜2万円ほど加わります。
繰上返済手数料
金融機関によって0円のところも、5万円前後かかるところもあります。
返済予定表ではなく、金融機関に直接確認してください。
ここまでで、いくら残るのか
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 26,000,000円 |
| ローン残債 | −18,000,000円 |
| 仲介手数料 | −924,000円 |
| 印紙税 | −10,000円 |
| 抵当権抹消(登録免許税+司法書士) | −17,000円 |
| 繰上返済手数料 | −33,000円 |
| 決済日の手残り | 7,016,000円 |
これに加えて、固定資産税・管理費・賃料・敷金の精算があります。
プラスにもマイナスにもなるので、金額は案件ごとに変わります。
なおうさぎアセットは、売主様から仲介手数料をいただいていません。
上の表でいえば92万4,000円がそのまま残ります。
翌年に、もう一度支払いがある
ここからが本題です。譲渡所得税を計算します。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
売却価格から、買ったときの金額と売るためにかかった費用を引いた残り。
これがプラスなら課税されます。
取得費は「買った金額」ではありません
ここがいちばん間違えやすいところです。
建物部分から、減価償却費を差し引きます。土地は減価償却しません。
賃貸に出していた期間、建物は毎年少しずつ価値が減っていく前提で計算されています。
その分だけ、取得費は買った金額より小さくなります。
引くのは「毎年の確定申告で必要経費に計上してきた減価償却費の累計額」です。
不動産所得の決算書(青色申告決算書または収支内訳書)に載っている金額を積み上げてください。
金額の感覚をつかむために、単純化した例を挙げます。
【単純化した例】
建物1,400万円 × 償却率0.022 × 10年 = 308万円 ← 減価償却費の累計
取得費 =(購入価格2,400万円 + 購入時諸費用80万円)− 308万円 = 2,172万円
鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年、定額法の償却率は0.022です。
ただし実際の金額はこの式どおりにはなりません。次の要素で変わります。
- 取得した月(初年度は月割りになる)
- 建物と土地の按分、建物附属設備を分けて償却しているか
- 中古で取得した場合の耐用年数(簡便法による短縮)
- 過去の申告でどう処理してきたか
この式で概算し、実際の申告では決算書の累計額を使う、と考えてください。
累計額を引き忘れると、取得費が大きくなり、税額が実際より小さく出ます。
そのまま申告すると、あとから修正を求められることになります。
購入時の契約書が見つからず取得費が分からない場合は、
売却価格の5%を取得費とみなす方法があります(概算取得費)。
ただし2,600万円の5%は130万円ですから、税額は跳ね上がります。
契約書は探してください。
譲渡費用に入るもの、入らないもの
| 入る | 入らない |
|---|---|
| 仲介手数料 | 抵当権抹消の費用 |
| 売買契約書の印紙税 | 繰上返済手数料 |
| 賃借人への立退料 | 引っ越し費用 |
また、固定資産税の精算金は費用ではなく、売却価格に加えます。
買主から受け取ったお金なので、収入として扱う決まりです。
税率は所有期間で倍近く変わる
| 区分 | 所有期間 | 税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
(所得税・復興特別所得税・住民税の合計です)
そしてこの5年は、売った日から数えるのではありません。
売った年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えているか
2020年7月に買って2025年10月に売った場合、実際には5年3ヶ月持っています。
しかし判定するのは2025年1月1日の時点。このとき所有期間は4年6ヶ月なので、
短期になります。
2,600万円の物件で、税額は次のように変わります。
| 税額 | |
|---|---|
| 長期(20.315%) | 約68万円 |
| 短期(39.63%) | 約132万円 |
差は64万円。売り出す時期を数ヶ月ずらすだけで変わることがあります。
計算してみる
先ほどの例で最後まで通します。
売却価格 26,000,000円
取得費 −21,720,000円 (2,480万円 − 減価償却308万円)
譲渡費用 −934,000円 (仲介手数料92.4万円 + 印紙1万円)
────────────────────────────
譲渡所得 3,346,000円
長期(20.315%)の場合 約 679,700円
決済日の手残りが701万6,000円でしたから、
翌年に約68万円を納めて、最終的に約633万円ということになります。
売却損が出た場合
投資用ワンルームは、売却損になることも珍しくありません。
その場合、譲渡所得税はかかりません。
ただし給与所得や事業所得と相殺することはできません。
マイホームの売却には損益通算の特例がありますが、投資用物件は対象外です。
同じ年に別の不動産を売って利益が出ていれば、その利益とは相殺できます。
まとめ
売却価格から引かれるものを、もう一度並べます。
- ローン残債
- 仲介手数料(上限あり。売主無料の会社もあります)
- 印紙税
- 抵当権抹消の登記費用
- 繰上返済手数料
- 翌年の譲渡所得税
6番を計算に入れていない方が多くいらっしゃいます。
そして税額は、減価償却の扱いと所有期間の判定日で大きく変わります。
売るかどうかを決める前に、この6つを並べた数字をご覧になってください。
「売れる価格」ではなく「残る金額」で判断できるようになります。
本記事は一般的な計算方法の説明であり、個別の税務相談ではありません。
実際の申告は、取得の経緯や過去の申告内容によって取扱いが変わります。
税務署または税理士にご確認ください。
うさぎアセットでは、査定価格とあわせて、諸費用を差し引いた手残りの試算をお出ししています。
売主様からの仲介手数料はいただいていません。
保有し続けた場合の収支と並べたうえで、「いまは売らないほうがよい」とお伝えすることもあります。







